「一般的な」麻雀のルールとは何か~私の場合~

Mリーグも盛り上がってきて、麻雀の知名度・人気度が上がってきている今日この頃です。さて、表題の件。放送対局で有名どころであるMリーグや麻雀最強戦、ネット麻雀でポピュラーな雀魂や天鳳、かたや一般の雀荘で行われるフリーやセットでも、それぞれで細かいところでルールが異なります。同じテーブルゲームの将棋だとさしてルールが変わることはあまりない(特殊ルールじゃなければ持ち時間くらいでしょうか)ものの、多様なルールがありそれによって戦略も変わってくるのが麻雀の面白みの1つであるものの、一方でそれが初心者にとっての分かりづらさになっているのかもしれません。
で、この記事でその結論は書かないしむしろ書けないのですが、ここでは日ごろ私が友人とセットでやるときのルールをMリーグと雀魂の段位戦ルールと比較することで考察してみることにします。
以下、私が友人とセットでやるときのルールを「セットルール」*1と書くことにし、雀魂の段位戦ルールは「雀魂」と簡略化することにします。なお、ここで特に言及しないものは、(いくらなんでも細かすぎるルールは除いて)各ルールで共通しているものとお考えください(例えば25000点スタートとか)。

ガリ止め

セットルール Mリーグ 雀魂
あり なし あり

純粋なゲームとしての競技麻雀と、セット麻雀やネット麻雀の違いの大きな1つとして、アガリ止めのありなしがあります。アガリ止めとは、オーラスで親が和了もしくは流局時に聴牌しているときに、そのまま対局を終了することができる権利のことです。たいていはオーラスで親の人が1位の場合に適用することが多いですが、2位や3位でも適用する流儀を採用している場合もあります(学生時代はラス回避のために止めることはごくまれにあったが、ここ最近は聞かない)。アガリ止めが存在することで、一般に起家のときに北家(すなわちオーラスで親になる)が有利になると言われています。
ちなみに、競技麻雀では採用されることがあまりないアガリ止めルールは、かつては麻雀最強戦で採用されていたことがあったそうですが、2018年にルール改定があり2024年現在ではアガリ止めなしになりました。

明槓(ミンカン)ドラ表示

セットルール Mリーグ 雀魂
補充牌を取り1枚牌を捨てた後 補充牌を取る前に表示 補充牌を取り1枚牌を捨てた後

ここも一般的なルールと競技麻雀でルールが異なるところです。暗槓した場合はすぐに新ドラを表示するのはいずれにも共通していますが、明槓の場合は、Mリーグでは明槓宣言直後に新ドラをめくっていますが、セット麻雀やネット麻雀ではあまり見かけません。Mリーグから麻雀に入られた方は、ここは注意が必要なところです。

暗槓の搶槓の例外

セットルール Mリーグ 雀魂
なし 役が国士無双のときのみ適用

暗槓の場合、基本的に槍槓は適用されないのですが、雀魂の場合、和了時の役が国士無双のときのみ暗槓される牌に対してロン宣言をすることができます。ちなみに、セットでは一度もそのような状況になったことがないので「?」としています(以降同様)。ちなみに国士無双のときのみ適用されるのはローカルルールとも言われています。

ツモ番のないリーチ

セットルール Mリーグ 雀魂
できない できる できない

Mリーグでは度々ドラマが起こる、最終巡でのリーチ。内川プロの海底一発ツモでの大逆転トップは有名な話ですね。しかしながら、セットや雀魂ではこのリーチはできません。

ダブロン

セットルール Mリーグ 雀魂
あり なし(頭ハネ) あり

ここもMリーグで度々ドラマになる話です。頭ハネで役満を逃した仲林プロのあの表情は今でも忘れられません。一方で、セットや雀魂ではダブロン(ロンによる2人の和了者を認める)はありになっています。ダブロンされた人にとってはたまったものではありません。

トリロン

セットルール Mリーグ 雀魂
なし(流局) なし(頭ハネ) あり

その一方で、トリロン(ロンによる3人の和了者を認める)はセットルールと雀魂では扱いが違います。セットではトリロンとなった瞬間に流局となることが多い(少なくとも私が最初に読んだ麻雀の本のルールにはそのような記載があった)ものの、雀魂はトリロンありなんだそうです。恐ろしい…。

点数の切り上げ

セットルール Mリーグ 雀魂
あり あり なし

今度は雀魂がセットやMリーグと異なるケースです。例えば子の30符4翻のロン上がりは、セットやMリーグ*2の場合は満貫の8000点ですが、雀魂では7700点になります。雀魂はこういうところだけなぜかトラディショナルなルールなんですね…。

チョンボによる罰符

セットルール Mリーグ 雀魂
子は2000・4000、親は4000オールの支払 20ポイントの減算 (起こり得ない)

例えば役がないとかフリテンなのにロン和了宣言して手牌を公開してしまった場合は、チョンボとして罰符を支払うことになります。セットの場合は満貫相当の点数を支払ってやり直し、Mリーグでは(細かい行為の対象はルールとして定められているものの)チョンボがあった局では、20ポイントマイナスとなって同じ局をやり直しとなります。セットと異なり相手に対し払わない意味では相手に利しない一方、純粋にポイントがセットのとき以上に引かれるのでなかなかの痛手です。その点、雀魂はチョンボになるような状況になるのは起こり得ない点では、初心者でもやりやすい麻雀ゲームとも言えます(逆にそこに依存しすぎるとなかなかルールを覚えなくなるデメリットはありますが…)。

西入

セットルール Mリーグ 雀魂
あり なし あり(西4局まで)

西入とは、東南戦で南4局を終えても誰も30000点を超えていない場合、誰かが30000点以上になるまで西1局から対局を続行することです。Mリーグだとどんなにトントンな点数でも南4局で終了する一方、セットや雀魂では西入があります。個人的には、学生時代に圧倒的にラスで凹んでいたオーラスでたまたま二盃口和了り、西入に持ち込んだことは今でも覚えています(ま、結局トップは取れなかったのですが)。

トビ

セットルール Mリーグ 雀魂
(人による) なし あり

点数がマイナスになった場合、トビといって対局がその時点で終了になるルールがあります。雀魂や(この記事ではこれまで言及していませんが)われめdeポンではトビありですね。Mリーグではトビなしで、最低点数のレコードという不名誉な記録もあります。一方、セットの場合は経験上人によって扱い方が様々な気がします。待っている人がいて半荘を回したい場合はありだったり、すぐに飛んじゃうとつまらないからなし、とかそこはいろいろだと思っています。

中流

セットルール Mリーグ 雀魂
九種九牌 あり なし あり
四風連打 あり なし あり
四軒立直 あり なし あり

麻雀では途中流局になるケースがあります。例えば1巡目に(それ以前に鳴きがない場合)一九字牌が九種類かつ九牌以上ある場合、九種九牌として途中流局することができます。Mリーグではいかなる途中流局は認められていないため、これらは適用されません。個人的には、全員が立直になる四軒立直でのめくり合いは、観ている側としては楽しいですけどね(やっている側はたまったものではないですが)。ちなみに、上記で挙げた3つは日本プロ麻雀連盟の公式ルールではかつて途中流局が認められていましたが、2023年のルール改正で認められなくなりました。

数え役満

セットルール Mリーグ 雀魂
あり なし(三倍満が上限) あり

数え役満とは13翻以上の役で和了したときに役満と同じ点数を適用するというものです。Mリーグでは役満以外の役では三倍満が上限になりますが、セットや雀魂では数え役満ありとなっています。和了ってみたいものだ。

和了

セットルール Mリーグ 雀魂
流し満貫 あり なし あり
十三不塔 あり なし なし
オープン立直 (人による) なし なし
四暗刻単騎 役満 二倍役満
国士無双十三面待ち 役満 二倍役満
九連宝燈九面待ち 役満 二倍役満
大四喜 役満 二倍役満

最後に和了役についてです。Mリーグは基本的にいわゆるローカル役と言われる役は認めておらず、例えば流し満貫や十三不塔は役がありません。また、役満の中でも四暗刻単騎(いわゆるスッタン)等の特別な待ち方や大四喜は、雀魂では二倍役満になります。ちなみに私はこの記事の執筆時点でリアル麻雀で役満和了ったことがありません(ネット麻雀では地和・国士無双四暗刻(単騎も含む)・大三元小四喜はあり。ちなみに九連宝燈に放銃したことはある)。いつかは和了ってみたい…!

あと、順位点もルールにより異なりますが、いろいろな流儀があるためここでは省略します(順位点のつけ方によって打ち方が大きく変わるので面白いところではありますが…)。

例えば、初めての人たちでセットで打つときとかは、打つ前に大まかなルールを確認するとよいでしょう。上記に挙げた違い以外にも

についても念のため確認した方がいいでしょう。余談ですが、まだ私が麻雀初心者でルールもよく知らなかったときに、悪い友人とセットしたときに「今日は喰いタンなしね」と言っていたのですがその意味がよく分からず(そもそもこの時点で確認すればよかったのですが)、喰いタン仕掛けて和了ろうとしたらチョンボを取られたときに、シメシメと見る悪い友人の顔は今でも忘れません。てめぇ…。

「一般的な」麻雀ルールというのは麻雀本や他のサイトで見かけるものの、何をもって「一般的」かはわからないところがあるので、統一したものがあってもいいかもしれませんね。とはいえ、セットで打っていているときにルールが決まっていないような状況があるときに「困ったらMリーグルールで」とMリーグルールを気軽に参照できるようになったのは、Mリーグ普及の貢献といえるでしょう。

amzn.to

*1:リアル友人向けの内輪な注意。ここで書いているルールはこれまで打ってきたルールを経験則的に平準化したものであり、必ずしも強制するものではない

*2:厳密には場ゾロの2翻を加えた6翻

アクチュアリー試験がまたいろいろと変わった件

日付が変わって昨日7月3日にアクチュアリー試験の試験要領が公表されました。昨年と同じく7月の第1営業日の公表になりました。

www.actuaries.jp

昨年も試験をCBT化するという大改革が起こったわけですが、今年の変化はそれをも超えるエポックメーキングなものになると思います。

まずは、何といっても1次試験の受験資格の引き下げでしょう。
2022年度までの受験資格といえば、

学校教育法による大学(短期大学を含む)を卒業した方が受験できます。
このほか、次の要件等を満たす方で、所定の書類を提出(※)し、試験委員会が大学を卒業した方と同等の資格試験受験に必要な基礎的学力を有すると判断した方も受験できます。

①大学3年生以上の者(4年制大学において、休学期間を除き2年以上在学し、かつ62単位以上の単位を修得した者)
高等専門学校卒業者
③学士資格を有しない大学院生
④外国の大学を卒業した者、または、外国において上記①~③に相当する学校教育における課程を修了した者
⑤生保数理、損保数理、年金数理等の日本アクチュアリー会資格試験の受験科目に関連する知識を必要とする、保険・年金などの業務に3年以上携わった者

2022年度資格試験要領より引用
要は、原則は大卒だけど、大学2年から進級できる以上の要件を満たしていれば受験できますよ、というものでした。
それが、今回の試験から、、

2023年3月31日時点で18歳以上の方(2005年4月1日までに生まれた方)

たったの1行!!18歳以上であれば、誰でも受験できる、ということになります。「誰でも」というところがポイントで、昨年までは少なくとも大学に在学ないし高専を卒業していないと受験できなかったのですが、今回は文字通り解釈すれば学歴は関係なし。大学1年生でも、浪人生でも、はたまた高卒や中卒でも受験ができる、ということになります。
アクチュアリー試験は最短でも2年かかるので、もし優秀な受験生がノーミスで合格したら、理屈上は19歳の正会員が生まれることになります*1
ちなみに、海外の最年少記録はどうなっているか調べてみたところ、SOAでRoy Juさんという方が2015年に20歳で正会員になった、という記事が見つかりました(わざわざ記事にするのがSOAらしいですよね)。
www.soa.org
ちなみに、SOAの受験資格に年齢制限はありません。なんとなれば、小学生のときからでも受験できます。一方で、2次試験に相当する試験が専門的であることと受験料がかなり高い(科目によって1,225ドルかかる)こともあってか、今のところ20歳が最年少記録、となっているようです。年齢制限がなくて、これです。

とまあ理屈のうわべだけの話で自分も最短でアクチュアリー試験を突破したわけでもないのに、資格はあっても偉そうなことを語る資格はないのは重々承知ですが、それでも敢えて書かせてください(←要はただの言い訳を並べただけ)。
まあきっと、いつかは正会員の最年少記録は生まれると思います。大学受験の必要のない内部生あたりが高校生のときから勉強して、順調に合格していく、というのは最年少公認会計士の記事を見ていればたやすく想像できます。
アクチュアリーとしては、仲間が増えることはいいことです。一方で、多くの若手受験生が大学生であることを鑑みると、大学生時代に頑張ってきたこと(世間で言うところのガクチカ)が「アクチュアリー試験」で本当にいいのでしょうか。興味があるなら止めはしませんが、本業を疎かにしてまでやりこむほどのものではない、というのは個人的には思います。私もそうですが、多くの正会員は社会人生活を送りながらアクチュアリー試験を突破してきました。それよりも、目の前にある興味あるもの(それが本当にアクチュアリーであれば止めないが)に打ち込んで、大学だからこそできる研究に打ち込んだ方が長い目で見て良いのではないか、と思います。
あと、理屈上浪人生や高卒、中卒でも受験はできますが、とりあえず大学に入ってから受けましょう。万が一大学を経ずに正会員になれたとしても、アクチュアリー採用をしている多くの会社は大卒を基本的に要件としているのが現実だからです。
もう、とにかく、受験生なら地に足をつけましょう!
そもそも1次試験で求められる数学は学部1年で習う微積の知識は必要だし、確率統計はともかくモデリングも本来なら学部3年で習うようなトピックです。また、会計・経済・投資理論(通称KKT)も、経済こそ学部1,2年で習うトピックではあるものの、会計と投資理論は学部2,3年で習うようなトピックでレベル感が違います。いくら学部1年で受けられるからといって、そう簡単には受からないのがアクチュアリー試験です。早く受かるに越したことはないですが、無理は禁物です。どうか早期合格を煽る人たちに振り回されないようにしてください。

と、いろいろ書いていたら、数年前にこんな記事を書いたことを思い出したんですよ。
key-channel.hatenablog.com
いやー、この記事の発端のアカウントの方、もうちょっと遅く決心していたら良かったのに。。と思う一方です(久々にアカウントを覗いたらリツイート数件のみで自分からのツイートは全部消えていました…)。

本題に戻ります。もう1つの大きな変更は受験料の変更です。
これまで、受験料は非会員は1科目10,000円、会員は7,000円だったのですが、今年度の試験からは一律8,500円になります。すなわち、非会員からすると値下げですが、会員からすると値上げです。受験生の大半は会員であることを考えると、ほとんどの人にとっては値上げですね。
リリースにはいろいろ理由が書いてありますが、まあSOAの2次試験の1科目1,225ドルに比べれば、、まだ良心的とも思えませんか?

あと、1次試験の日程が、昨年は5日間だったのに対し、今年は4日間に変更されていることにも注意です。3日目の午前の年金数理と午後の数学を両方受ける受験生は、受験会場の選択に注意が必要です。

大学1,2年生、いや、18,19歳の方にとってはいきなりチャンスが降ってきた今回の試験制度の変更ですが、受験するとしてもダメでもともとの気持ちくらいがちょうどいいと思います。
ともかく、受験される方は頑張ってください。

*1:例年理事会承認は3月上旬なので、それ以降から4月1日までに誕生日の人は19歳の正会員ということになる

少子化には良い面もある?

生命保険の業界紙である「週刊インシュアランス 生保版」の2023年6月号第4集を読んでいると、「主張」というオピニオンコラムのコーナーにとんでもない見出しを見つけてしまいました。その見出しは、「少子化には『良い面』もある」というものです。
インシュアランスはネット記事を掲載しなくなったので、要点だけまとめると、こんなことが書かれていました。

  • 少子化」は深刻な問題であるが、好ましい側面もあるのではないか
  • 人口問題を取り上げる際は、多様な視点・長期的な展望で考えることが重要
  • 「一人当たり引き継がれるもの」は少子化になるほど大きい(正の遺産も負の遺産も)
  • 「高齢化」問題や「空き家」問題も同様に見方を変えればポジティブな捉え方もできる

好意的に解釈すれば、「少子化」を題材にして、一方的な見方だけに固執せずにいろんな考え方をしてみよう、という読者へのメッセージなんだろうな、というのはあながちわからないでもないです。しかしながら、「少子化」を題材にするのはちょっと無理筋ではないか、というのが一読した感想です。
この主張に対しては2つに分けて考えるべきであり、

  • 一般論として多様な視点・長期的な展望で考えることに対する是非→これは同意
  • それを踏まえて少子化には良い面もあるのかという是非→それは同意しがたい

と、大風呂敷を広げるだけ広げて、各論については例示にとどまっているのはちょっと無責任にも感じます。

例えば、少子化の「良い面」として挙げている「一人当たり引き継がれるもの」が大きくなるという点ですが、具体的に引き継がれるものとは何でしょうか。マクロ的には、(記事でも挙げているが)道路や上下水道などの公共物、ミクロ的には、親から相続するであろう遺産でしょうか。前者の場合、公共財を資産評価したものを1人当たりに頭割りして考えることはナンセンスですし、むしろ少子化によってそれを維持する人手が足りなくなってきているのが現状です。後者の場合、確かに裕福な家庭であればその恩恵を受けるケースもあるでしょう。しかしながら、取り分が増えるだけ相続税もかかるわけで、どのくらい恩恵があるかはちょっと複雑な問題な気がします。ちなみに、この記事によると、平成27年の税法改正の要因もありますが、被相続人一人あたり金額は減少傾向にあるようです。果たして、それらを踏まえると総合的に見てプラスだと言えるのでしょうか?定量的に分析してみる余地はあるかもしれませんが、直観的には疑問符がつきます。

見方を変えることで議論が発展することはあるでしょうが、アイディアだけにとどまらずにそこから深い考察を入れていかないと意味がないですし、「見方を変える」といいつつやっていることが「現実逃避」や「ポジティブシンキングという名の思想の塗り替え」になってしまっては元も子もありません。

Mリーグ2023-2024ドラフト会議の予想をしてみた

独断と偏見が入り交じったMリーグドラフト予想でも置いておきます(敬称略)。異論は受け付けない。なお、当方はMリーグのファンの1人に過ぎず、機構や各チームとの利害関係は一切持ちません。

BEAST Japanext
菅原千瑛※指名確定
鈴木大介・・・即戦力の超攻撃型麻雀はまさにビーストにふさわしい
浅井堂岐・・・オーディションでは敗れたものの、最後まで諦めないアシスト+雀王の実績は十分
HIRO柴田・・・鳳凰位タイトルに加え、安定した打ち運びでポイントゲッターとして期待大

セガサミー・フェニックス
醍醐大・・・最高位戦のプロから選出が有力となると、近藤プロの代わりが務まるのはこの元最高位か

・赤坂ドリブンズ
友添敏之・・・風林火山オーディション決勝にも残り、去年の最強戦決勝にも残り、アピールとしては十分評価に値する
水口美香・・・もともと2019ドラフトの有力候補の1人だった人気女流雀士。4年越しの悲願なるか

※他可能性がある有力候補
忍田幸夫・・・ベテランの精神的支柱として、BEAST Japanextの指名はあり得る
竹内元太・・・現最高位。実力なら↑の最高位戦のプロよりも申し分ない。ドリブンズは可能性あり?
新井啓文・・・オーディションで肉薄する実績は申し分ないし、ムードメーカーにもなれる。BEAST Japanextとドリブンズは可能性あるか
矢島亨・・・元雀王。人気も実力も申し分ないが、あとはアピールがどこまで届いたか
佐月麻理子・・・今女流で実績だけで評価するならこの人。男性にも負けない打ち筋が魅力
中田花奈・・・BEAST Japanextに指名されればすぐさま看板選手になり得るが、菅原プロの指名確定により、その確率は半減?

 

泣いても笑っても、結果はあと4日後。

横浜マラソン2022を走ってきました~感想と課題~

久々の更新です。

タイトル通りでありますが、先週の日曜日に横浜マラソン2022のフルマラソンの部に出場し、なんとか完走することができました。今日は当日の振り返りと(自らのことはおこがましくも反省せずに)今後の横浜マラソンの課題について書いてみようと思います。

横浜マラソンは文字通り横浜を走るマラソン大会で、フルマラソンはみなとみらいからスタートして、本牧、根岸、磯子と南に進んでいって、金沢区の南部市場付近を折り返して、再びみなとみらいに戻っていく、というコースになっています。
当日は横浜市出身の谷原章介さんが7kmの部を完走したとか、有名人も走っていたそうで、東京マラソンまではいかずとも、横浜ならではの盛り上がりを見せていたようです。
と、他人事のような(雑な)概要はともかく、早速本題に行ってみましょう。

横浜マラソン当日の振り返り

ラソンのみならず、普通翌日にスポーツの大会が控えているのであれば、前日は十分に睡眠をとって身体を休めるのは当然のこと。が、私はこの前日に限って、のっぴきならない事情で夜中の2時まで起きていなければならず、そして当日は受付の時間の事情で6時起きせねばならず、わずか4時間しか寝れませんでした。個人的には、4時間睡眠によるコンディション不良というよりもよく寝坊しなかった、というところで若干安堵していました。
軽くシャワーを浴びて、いざ出発。最寄駅で電車を待っていたら、荷物預かり用の袋持っている人や運動靴に計測タグをはめている人が乗ってきて、明らかに同志と思われる方々を見かけました。
朝ごはんは、食べ過ぎて走っていて腹痛になるのが怖いので、アミノバイタルのゼリードリンク*1だけ注入しました。
みなとみらい駅はマラソンランナーでごった返していて、トイレは行列…。駅のトイレは諦めて、そのままパシフィコ横浜の受付へ。受付を済ませるには、専用のサイトで過去1週間の体温・体調を入力する必要があって、過去1週間分入力することで、ようやく受付可能となり、そのバーコードを読み取ってくれて、中に入ることができます。そこで手荷物を預けて、いよいよTシャツにジャージ姿とランニングモードになります。手元にはスマホと片耳分のワイヤレスイヤホンだけ。
といってもスタートまでは1時間くらい残っている。というわけで、トイレに行くことに。が、ここでのトイレの行列はみなとみらい駅以上の長蛇の列。まあ時間はあるとはいえ、こんなことなら先に駅のトイレに行っておくべきでした。行列を待っている間は、スマホのファイル整理で時間つぶし。よい時間つぶしになりました。
スタートは8時30分で、15分前にようやくスタート地点に到着。スタート地点はどうやらゼッケンのアルファベットごとにブロックが異なるようで僕はEとのことで本来にスタート地点のランドマークタワーからやや離れた横浜市役所近くで待機。おそらく、事前記入のゴール予想到達時間でおおよそ分けられているのでしょう(Aに近いほど3時間切りで走り、後の方だと設定時間ギリギリ)。確かKまであったから、参加者の中では真ん中くらいなのでしょう。
ランナー側からすると、オープニングで何が起こっているかが全くわかりません。とりあえずマイクで男性が何か騒いでいる(どうやら山中市長だったらしい)のは聞こえても、何を言っているのかはまったくわからず、8時半付近でなんかよくわからないけど拍手が起こったのでとりあえず拍手。隣の道路では僕より早いアルファベットのブロックが前進しているのを見て、ようやくスタートが近づいた、という気分になりました。そして、、いよいよスタート!最初は前が混んでいることもあり、ほぼジョグくらいの速さでしか前に進めず。ようやくランドマークタワー前のスタート地点に到着。スタート地点には、24時間テレビの100kmマラソンでおなじみの坂本トレーナーやfm yokohamaのDJの栗原治久さんらが盛り上げていました。そこに手を振って、意気揚々とスタート。
最初に飛ばし過ぎてもいけないので、控えめに周りに合わせるようなペースで進める。ペース的にはほぼ8km/hくらいで、息切れしないくらいのペース。目標は5時間前半くらい。
まずは北上して、神奈川区の中央卸売市場を目指す。ここら辺は周りを見れる余裕がある。
そこを通過してまたみなとみらいへ戻る。ここら辺はコースの距離稼ぎなんだろうなあ。
給水スペースがこまめに置いてあるのが印象的でした。実際はちょっと覚えていないものの、だいたい1.5kmに1箇所はあるよようなイメージでした。12年前に10kmの部で参加したときは、1箇所しかなかったので、ずいぶん対照的。というわけで、お言葉に甘えて、ほぼ毎回給水のアクエリアスを取り続けました。
42.195kmは果てしなく長い。みなとみらいに戻ったのはいいものの、そこから山下ふ頭、本牧へと向かっていく。そこからさらに南下する。マラソンのこれまでの最長は10kmだし、ウォーキングを含めても、四国八十八ヶ所でも1日20数kmが最長だったので、半分越えたらもはや未知の世界です。本牧の10km通過までは元気でしたが、そこから30kmもあるのかという絶望との闘いです。。しかも、当日は磯子くらいまで走るというくらいの認識でコースをきちんの把握しておらず、南部市場まで走るの!?となったときにはうげー、、となっていました。
ところで、横浜マラソンの翌日がハロウィンということもあり、コスプレランナーもちらほら見かけました。覚えているだけでも、マリオとルイージ、ルフィ(前日に映画が放送されていましたね)、亀仙人水戸黄門(!)、楽天カードマン、etc.と盛りだくさん。それにしても、走りに影響しないんですかね。
走っている最中は、スマホに入れた音楽を聴くのが唯一の癒し。どうやらルールでは両耳にイヤホンをつけてはいけないらしく(大会主催者の指示が聞こえなくなるから)、片耳で聴いていました。ここは大好きなWANDSをかけまくっていました。
本牧から根岸へ向かうところで明らかにペースダウン。ここらへんで、とりあえず折り返し過ぎたらリタイアしようかを真面目に頭をよぎっていました。とにかく走っても走っても終わらない(当たり前だ!)。脚も痛いんだけど、絶望感の方が強い。
ここら辺になると、電車感覚で走っていました。スピードは電車にならないけれど、駅に向かって走る感じ(元町・中華街→石川町→(本牧)→根岸→磯子新杉田→南部市場)になっていました。次は~根岸~根岸~みたいな感じ。といいつつも、根岸線の電車に抜かれてまた絶望するわけですが。
そんな感じで身体を騙し騙し走っていくのですが、脚がだんだんと重くなっていく。太ももらへんに鉛を巻いて走っているのか、という気分。走りたくても、歩幅が靴のサイズくらいにしかならない。きつすぎる。ここらへんからだんだんと周りが自分を抜く人が大多数になってきました。
とはいえ、もはや惰性で走り続け、なんとか南部市場の折り返しまでたどり着きました。もうやめたかったけど、ここら辺になると、倒れりゃ本望とよくわからない開き直りで走っていました。
そこから帰りはしばらく国道を走ってから高速道路へ。これが地獄の始まりとはつゆ知らず…。というのも、高速道路に入ってみなとみらいへ戻るのかと思いきや、新杉田の入口に入ったら、なんと南部市場方面にまた走っていくとは…。これは精神的に参ります。なんせ、みなとみらいから遠ざかっているわけですから。どこまで行っても折り返しが見えない。これがつらい。そしていよいよ太ももが上がらなくなってきた。。これは走るより早歩きの方が早いのでは。。ということでここから早歩きにスイッチ。太ももを上げなくて済むので、ややきつさはやわらぐ。ただ、ペースはやはり走るより遅くなるし、意識して腕を振らないとペースが遅くなってしまうので、腕を大きく振っていくことは意識していました。
みなとみらいへの逆走はやはり南部市場付近で折り返しになり、ここからようやくみなとみらいへ帰っていくだけ。
それにしても、高速道路に入ると給水スペースも豪華になっていき、ベリーダンスサルサを踊っている女性陣がいたり、ともかくランナーを盛り上げようという意図を感じました。こちとら盛り上がる余裕はないのが本音なのですが。
高速道路は山下ふ頭付近(本牧JCT)でお別れ。ようやくゴールが近いという感覚に。それにしてもここら辺からボランティアの方のプラカードが頻繁になってきた印象ですね(「ゴールまであと少し!」とか「痛みは気のせい!」とか)。
時間制限も気になるところですが、そこはなんとか制限30分以上はキープしていたようです。
そして、、14:31、グロスで6時間1分、なんとか完走することができました。ネットではなんとか6時間切り。ゴール後にはラッキー給食なるものがあったのですが、その1つのデルモンテのバナナだったときは心の中でずっこけました(でもうまかったです、というかエネルギー補給にかなり助かりました)。
フィニッシュの瞬間は、泣かずともこみ上げてくるものがありました。よくここまで耐えられた自分、そして支えてくれたボランティアの方々。体調は最悪だけど、なんとかなりました。

横浜マラソンの感想と課題

とにかく、止まるな!

これはマラソンが好きな、僕の大師匠の教えで、とにかく止まらずに走っていれば42.195kmだろうが100kmだろうが完走できる、というものです。後半は早歩きになってしまいましたが、足がつろうがともかく止まらないことを意識していました。給水ポイントだと減速せざるを得ないのですが、その際の加速はかなりきつかったです。ということは、止まってから再び走り出すのはかなりきついのは容易に想像できます。完走したかったら、どんなにきつかろうが、とにかく止まらずに走り続けることです。

ラソンというよりハーフマラソン+ハーフ競歩

前半はペースはともかくなんとか走れたものの、後半の高速道路に入ってからは早歩きになってしまいました。終わってから時間を見返したところ、前半はほぼ10km/hで貯金して、後半は早歩きでペースダウンしたので貯金を食いつぶしていた格好になっていたようです。横浜マラソンの制限時間は6時間半で、まあハーフマラソン+ハーフ競歩でもなんとかなるということが証明できたようです。ところで、だいぶランナーに抜かれて、高速道路で給水ポイントでアクエリアス飲んでいたら、とあるボランティアがぼそっと「もう全然人が来ないね」と言っていて、事実ではあれど、だいぶ遠ざかってしまったのかと辛かったです(ボランティアにというより、実力不足の自分に)。

参加費が高すぎる問題

とにかくですね、参加費が高すぎです!
この横浜マラソン2022のフルマラソンの部にエントリーするのに支払った金額は、21,000円(支払手数料込み)です。これは、東京マラソンに次ぐ高さです。
で、これ、どれくらい高いのかというと、例えば10年前の東京マラソン2012だと10,000円でした。この10年でほぼ倍になっているわけです。横浜マラソンでフルマラソンが始まったのは2015年ですが、その年のフルマラソンの参加費は支払手数料込みで15,200円*2。同大会比較でも約4割も値上げされているのです。感染対策でコストがかさむとか理由はあれど、これでは一般ランナーが気軽に走ってみようとかなりづらくなるのではないでしょうか。別に儲けるわけじゃないのなら、もっと工夫できないものでしょうか。それでも払って走ったわけですが、次も走りたいかと言われると、金銭的な意味ではちょっと足踏みしてしまいます。
www.moneypost.jp

絶望の高速道路

当初、高速道路を走れるというのは自分の中で喜びでした。なんせ、普段は高速道路をon footで走れることなんてないわけですから。ところが、、いざ高速道路に入ろうとすると、当然入るときは上り坂。そこでペースダウンを余儀なくされる。それに上記のとおり、南部市場から新杉田へ向かってみなとみらいへ帰ろうとしているところに再び南部市場へ向かわせようとしているわけですから、ランナーのモチベーションがダダ下がりです。こんなことをさせるくらいなら、国道での折り返しをそもそも海の公園八景島シーパラダイスにするか(すなわち南部市場のさらにその先)してほしいです。
さらに、高速道路の何が辛いかというと、カーブです。一般道であればただ単に曲がるだけなのですが、高速道路のカーブはわざと斜面になっています。この斜面を走るのは、常に上り坂を走っているような感触で、とにかくきつい。下手すると、高速道路の入口の上り坂よりもこの斜面走りはしんどいです。横浜マラソンの難所は間違いなく高速道路だと思います。

楽しいのは走っている最中ではなく、走った後!

これはただの個人の感想に過ぎないことを強調しておきますが、一素人でロクに練習もできていない(ジムで週1,2で5km orサイクルで10km走るのが関の山)人間からすると、走っている最中はただただ辛く、沿道の声援に応える余裕なんてありません。楽しく走ろうなんて誰が言ったのでしょうか。そんなの、土台無理です!!
とはいえ、喉元過ぎれば熱さを忘れる、ということわざがあるとおり、走った後はこのブログを書く余裕があるとおり、いくらでも武勇伝的に語れるわけです。そりゃ振り返るのは結果的に完走できたし楽しいです。
まあ日頃からきちんと練習しているランナーは楽しいのかもしれませんが、僕にとっては最初の10km以外はほぼほぼ苦痛でしかありませんでした。

オープニングがよくわからなかった問題

スタートがブロックによって別なのが分かっているなら、せめてスピーカーはつけてもらいたかったですね。僕は市長の熱烈なファンというわけではありませんが、何と言っているかくらいは知りたかったです。よくわからないまま拍手して、よくわからないまま走らされるのはちょっとランナーファーストとは言い難いです。

と、いろいろと書いてきましたが、ボランティアの皆さんには本当に助けられました。彼(女)らの応援がなければ、完走できなかったと思います。円滑な運営になったのも、ボランティアがあってこそだと思います。
走ってみて、こんなに自分が遅いのかと現実を見せつけられたと同時に、アスリートが2時間数分台でしのぎを削っていることを心から尊敬できます。あんなペースでずっと走れるって、当たり前ながらすごいことなんだと体感できました。
ともかくフルマラソンを完走できてよかったです。次…?いや、もう応援する側で十分です。

*1:アミノバイタルにした理由は、単に近所のドラッグストアで安かったから。

*2:インターネット申込、クレカ支払の場合。

アクチュアリーに興味を持ったら読みたい本10選

アクチュアリー試験、お疲れ様でした。最後の筆記試験でしたが、出来はいかがでしょうか。ちらっと問題を見ましたが、数学の難化と年金数理の易化を除けばほぼ標準的な問題ではなかったでしょうか。
さて、先日某所で学生向けに講演をしたのですが、そのときに心残りだったことがあります。それは、もしアクチュアリーに興味を持ってそれについてもっと深く知りたくなったときに、どういう本や文献を読めばいいのか、ということまで時間の関係で話せなかったことです。「アクチュアリー」でググると、たいてい紹介されているのは、アクチュアリー試験の攻略に関する記事です。学部3年以上から受験できるので、アクチュアリー試験に興味を持つことは自然なことです。その一方で、アクチュアリーの仕事というのは当然アクチュアリー試験ではないですし、特に学生時代であれば時間があるときに試験勉強以外のこと(例えば研究とか)にチャレンジするべきだと思っています。
そこで、この記事では、もし私が学生時代に同じようにアクチュアリーに興味を持ったときに読んでおけばよかったなー、と思う本を紹介します。アクチュアリー試験対策にこだわらず、純粋にアクチュアリアル・サイエンスや保険業界について知れる本を揃えてみました。学生もそうですが、受験生にとっても2月の合格発表まで待っているこの時期に手を取ってみるといいでしょう。
まあこれ以外にも読んだ方がいい本や文献はいろいろありますが、ひとまず導入にふさわしいという意味で10冊挙げてみました。
なお、この記事では以下の前提を置いています。

  • 理工学部もしくは経済学部1,2年生で履修するであろう微分積分線形代数は学習済み
  • (測度論を使わない)確率統計は学習済みもしくは別途学習する予定(この記事では測度論を使わない確率統計の本の紹介はしない)
  • アクチュアリーについて興味を持ったが、アクチュアリー試験の勉強はこれまでしたことない

アクチュアリー概論

『すべては統計にまかせなさい』(藤澤陽介)

www.amazon.co.jp
題名に「アクチュアリー」は入っていませんが、内容は不確実な事象に対してアクチュアリーはどのような統計アプローチで立ち向かってきたか、というのを平易に書かれています。著者曰く「高校生にも理解できるように書いた」と聞いたことがあります。複雑な数式は入っていないので、おおまかな概要をつかむのにはもってこいだと思います。

保険業界について知る

『利用者と提供者の視点で学ぶ 保険の教科書』(植村信保)

www.amazon.co.jp
福岡大学の植村先生が書かれた、保険学についてのテキストです。アクチュアリーに特化した本ではありませんが、保険について会社側からの視点と契約者からの視点とで分けて解説していて、保険やその業界について知るのに、導入としてぴったりです。学部1年生からでも読みやすく書かれていると思います。

『経営なき破綻 平成生保危機の真実』(植村信保)

www.amazon.co.jp
こちらも植村先生が書かれた本です。2000年前後に、生命保険会社が続いて経営破綻しました。なぜ経営破綻したのかについて、かなり踏み込んで書かれています。アクチュアリーの使命の1つに「契約者に保険金を確実に支払うために保険会社の健全性を確保する」ことが挙げられます。しかしながら、なぜ会社を守ることができなかったのか。技術的な話を抜きにして、職業倫理的観点からアクチュアリーがどうふるまうべきかを考えさせられる1冊です。

保険数理について知る

『生命保険数学の基礎 第3版: アクチュアリー数学入門』(山内恒人)

www.amazon.co.jp
アクチュアリー試験でいう「生保数理」のテキストです。アクチュアリー試験では『生命保険数学(上巻・下巻)』(二見隆)が指定教科書、『アクチュアリーのための 生命保険数学入門』(京都大学理学部アクチュアリーサイエンス部門編)が指定参考書になっていますが、この本のいいところは、行間なく読めるところです。これでもかというくらい丁寧なその分ページ数があるものの、急がば回れともいうようにじっくりと読み進めていけば生保数理の理解に近づきます。私は受験生時代、二見氏の教科書ではなくこちらで勉強していました。
ちなみに、Youtubeでは山内先生がこの本をテキストにつかった生命保険数学の解説動画が見れます。この本片手に勉強するには適切な解説動画となっています。
www.youtube.com

Excelで学ぶ生命保険 商品設計の数学』(成川淳)

www.amazon.co.jp
この本も生保数理の本ですが、二見氏の本や山内先生の本と異なるのは、付録のExcelファイルをダウンロードして、保険料や解約返戻金の計算をExcelを用いて実習できるところにあります。現代のアクチュアリーは保険料などを手計算しているわけではなく、ExcelなどのPCソフトを用いて計算・集計しています。その意味では、会社勤めをしたことがない人にとっては生保実務を体験できる数少ない本です。

『保険数理と統計的方法 (理論統計学教程:従属性の統計理論)』(清水泰隆)

www.amazon.co.jp
リスク理論に関する本で、アクチュアリー試験の損保数理を超えてリスク理論をきちんと勉強するのにいい1冊です。アクチュアリー試験の指定教科書である『損保数理』は測度論を避けて記述しているがゆえに、わかりづらい記述になっているところがあります。それをも超えてしっかりと勉強できる重厚な仕上がりになっているので、特にリスク理論を専攻したい学生にはぴったりです。測度論的確率論を前提としているので、↓で紹介する『統計学への確率論, その先へ』のような本で一通り勉強してから読むとスムーズかもしれません。

(測度論を用いた)確率統計関連

統計学への確率論,その先へ: ゼロからの測度論的理解と漸近理論への架け橋』(清水泰隆)

www.amazon.co.jp
確率論についての本格的な本です。アクチュアリー試験で登場する数学や損保数理は、測度論の知識がなくても合格できます(ただし、損保数理の一部単元で測度論の知識があると理解が深まる箇所はある)。一方で、本格的なリスク理論やデータサイエンスを学ぶには、測度論の理解は不可避です。この本のいいところは、応用を意識して測度論を用いた確率論を解説していて、その「ココロ」となる部分にも踏み込んでいるところです。測度論を用いた確率論の本格的な著書はいろいろありますが(例えば「舟木確率論」など)、初学者にも手に取りやすいという点では、測度論的確率論の最初の1冊目の本として適していると思います。もっとも、測度論そのものを理解するのには時間がかかる性質があり、確率統計を未修の人は、まずは測度論を用いない確率統計の授業もしくは教科書を一通り学習してからこの本に取り組んだ方が面食らわないかと思います。

ERMについて知る

『保険とリスクマネジメント』(スコット・E. ハリントン, グレッグ・R. ニーハウス)

www.amazon.co.jp
古典的な保険とリスクマネジメントの理論に関して書かれた本です。学生に講義するのにちょうどいいレベルで、読みやすいと思います。ページ数は多いですが、こちらも急がば回れで行間なく読める1冊に仕上がっています。

『増補版 金融リスク管理を変えた10大事件+X』(藤井健司)

www.amazon.co.jp
リスク管理は重大事件をきっかけに高度化されてきた一面があります。この本は読み物として「何が起こったのか」「なぜ起こったのか」そして「その教訓」を知るのに手っ取り早く知れる本です。今回紹介した本のなかでは最も読みやすいと思います。ちなみに、姉妹本として『日本の金融リスク管理を変えた10大事件』(藤井健司)もあります。こちらもあわせてどうぞ。
www.amazon.co.jp

データサイエンス関連

『入門 Rによる予測モデリング――機械学習を用いたリスク管理のために』(岩沢宏和、平松雄司)

www.amazon.co.jp
リスクに対して統計モデリングでどのように扱うかを紹介している本です。日本アクチュアリー会の会員になれば、データサイエンスに関する資料を無料で入手できますが、非会員向けには非常にまとまった本です。ご自身のPCにRをインストールして手を動かしながら読み進めるといいでしょう。「まえがき」に確率・統計の基礎知識を前提としている、とありますが、個人的にはアクチュアリー試験の数学・損保数理をひととおり勉強しているとスムーズに理解できるのではないかと思います。

2022年アクチュアリー試験CBT化へ~すぐに起こること、中長期的に起こりそうなこと~

※私は執筆時点でア会の資格試験関連に一切携わっていません。一会員の個人的な意見・感想として読み流してください。

日付変わって昨日にビッグニュースが飛び込んできました。例年通り、今年のアクチュアリー試験の試験要領が公表されたのですが、それとともに資格試験そのものが2022年からCBT(Computer Based Testing)へ移行することが公表されました。

www.actuaries.jp

要点をまとめると、

  • 紙ベースの試験は今年が最後
  • 来年から、受験生はいわゆるテストセンターでコンピュータ上で受験
  • 試験会場は現行の東京・大阪以外にも設置予定
  • 開催時期、実施回数、受験料、試験科目、試験範囲は当面そのまま

ということのようです。

CBTは、SOA(米国アクチュアリー会)の試験やTOEFL(正確にはiBT)、証券アナリスト基礎講座修了試験などで導入されているコンピュータベースで受験する試験形式のことです。最近ですと、生命保険協会が実施する一般課程や生命保険講座などの試験も2020年からCBTになりました。

CBT試験概要 | 生命保険協会

SOAやIFoAでもすでにCBTで実施しているし、さらにCERA試験は去年からオンライン試験に移行し、いつwebベースの試験に移行するのか待っていたところなのですが、ようやく重い扉が開いたということで、この流れは歓迎したいと思います。

特に、試験会場が東京・大阪以外にも拡大とのことなので、関東圏や関西圏以外に在住の受験生には助かる措置ですね。

私自身、テストセンターでの受験といえば、院試のために受けたTOEFLと新卒採用のためのSPI受験での経験くらいしかないのですが、その乏しい経験と妄想で、これから起こりうることを想像してみました。ただの想像なので、来年以降フタを開けてみて「全然違うじゃないか!」と文句言われても責任は取れないので、悪しからず。

すぐに起こること

「速記力」を鍛える必要がなくなる

アクチュアリー業務に携わっていなくても容易に想像できるかと思いますが、実務で手書きでバーッと書くような仕事なんてありません。強いて手書きをすると言えば決算や報告書にサインする程度でしょうか。しかしながら、現行のアクチュアリー試験の2次試験では早く・綺麗に書く能力が黙示的に問われています。目安として、所見問題の解答用紙1枚(約1050字)を20分で書き切らなければなりません。私に限らず、所見対策のために「ペンダコ」ができたという正会員は少なからず聞きます。

しかしながら、CBTになれば、タイピングさえスムーズにできれば、手書きよりも早く記述することができます。字を書くのが遅い人や字が汚い人には朗報ではないでしょうか。

所見問題は枚数制限から字数制限に?

先ほどの関連で、裏を返すと、いかようにも書けちゃうことになります。現行の所見問題では枚数制限がありますが、CBTに移行することで「枚数」という概念から「字数」という概念に変わるのではないでしょうか。コンピュータベースだといくらでも書けちゃうので、とりとめのないことを漫然と書きがちです。論展開の骨子を紙ベースの試験以上に意識しておく必要があるでしょう。

試験問題のパターンは複数?

TOEFLの試験からイメージするに、出題される試験問題は、受験生によって異なるかもしれません。というのも、テストセンターで受験するという性質上、受験生が一斉に受験する、というのは難しいと思います(二次試験なら可能でしょうが…)。そうすると、その時差を利用してカンニングする受験生が出てくるのを防ぐためには、出題パターンが受験生ごとに違うこともありうるかもしれません。

ちなみに、テストセンターの会場を調べてみると、東京は結構会場数がありそうです。例えば証券アナリスト基礎講座修了試験の会場を見ると、約40会場は使える余地がありそうです。一番受験生が多い数学で約1000人なので、極論全員東京に集まって1会場25人と見積もっても、もしかしたら同時に実施できるかもしれません。おや、そういえばテストセンターリストの中に五反田TOCがありますね。

j5.prometric-jp.com

1次試験の合否はすぐ分かる?

受験生のよくあるクレームの1つとして、「1次試験はマーク式ですぐ結果がわかるはずなのに、合否通知は2次試験と同じ2月中旬」というのがあります。この気持ち、よくわかる。

紙ベースの試験だと、一旦マークシートなり解答用紙を回収するという行為を行うので、合否通知も回収側に委ねられるということになるのですが、CBTですと、1次試験ならすぐ合否通知を出せるのではないでしょうか。実際、SOAの試験でもすぐに合否がわかるようになっています。

あくまでも私見ですが、こういうところで変な「公平性」を出して合否通知はこれまで通り一律2月、とならないことを祈ります。

中長期的に起こりそうなこと

データ分析に関する試験の追加?

リリースでは、「試験科目及び試験範囲についての大幅な見直し(※4)については、現時点では予定していません」とあります。しかしながら、これはあくまでも「現時点」であり、中長期的には試験科目が増える可能性があることは否定していません。

CBTにより可能になることは、PCの操作を用いた試験が可能になるということです。SOAの試験では、PA(Predictive Analytics)という試験科目があります。これは、5時間15分(!)の試験時間で、データ分析とレポートの提出が求められます。

アクチュアリーの業務というのは、紙とペンを持って積分するよりも、データをこねくり回していろいろと分析・報告する(プライシングであれバリュエーションであれ、リスク管理であれ)のが大部分であり、求められるスキルを再定義されても然りではないでしょうか。これと同類な試験が、今後追加されるかもしれません、知らんけど。

www.soa.org

年1回から試験回数が増える?

試験回数は現時点で年1回です。そして、リリースでも現時点で変更の予定はないとしています。しかしながら、SOAの試験では、多い科目では年6回実施しています。CBTだと大掛かりな会場準備をする必要がないので、手軽に試験を実施できるようになります。あとは試験委員側のキャパシティ・クオリティの問題さえクリアできれば、理屈としては可能だと思いますし、それがアクチュアリー会の裾野を広げることになるのではと思います。もっとも、正会員からの受験機会の数という意味での不公平感のクレームが出ないとは言い切れませんが…。

 

受験生としては、紙だろうがCBTだろうが、現時点で残っている試験科目に対して最速で合格できるように日々勉強に取り組むことが賢明だと思います。今年の試験まで半年切りましたしね。