アクチュアリー試験がまたいろいろと変わった件

日付が変わって昨日7月3日にアクチュアリー試験の試験要領が公表されました。昨年と同じく7月の第1営業日の公表になりました。

www.actuaries.jp

昨年も試験をCBT化するという大改革が起こったわけですが、今年の変化はそれをも超えるエポックメーキングなものになると思います。

まずは、何といっても1次試験の受験資格の引き下げでしょう。
2022年度までの受験資格といえば、

学校教育法による大学(短期大学を含む)を卒業した方が受験できます。
このほか、次の要件等を満たす方で、所定の書類を提出(※)し、試験委員会が大学を卒業した方と同等の資格試験受験に必要な基礎的学力を有すると判断した方も受験できます。

①大学3年生以上の者(4年制大学において、休学期間を除き2年以上在学し、かつ62単位以上の単位を修得した者)
高等専門学校卒業者
③学士資格を有しない大学院生
④外国の大学を卒業した者、または、外国において上記①~③に相当する学校教育における課程を修了した者
⑤生保数理、損保数理、年金数理等の日本アクチュアリー会資格試験の受験科目に関連する知識を必要とする、保険・年金などの業務に3年以上携わった者

2022年度資格試験要領より引用
要は、原則は大卒だけど、大学2年から進級できる以上の要件を満たしていれば受験できますよ、というものでした。
それが、今回の試験から、、

2023年3月31日時点で18歳以上の方(2005年4月1日までに生まれた方)

たったの1行!!18歳以上であれば、誰でも受験できる、ということになります。「誰でも」というところがポイントで、昨年までは少なくとも大学に在学ないし高専を卒業していないと受験できなかったのですが、今回は文字通り解釈すれば学歴は関係なし。大学1年生でも、浪人生でも、はたまた高卒や中卒でも受験ができる、ということになります。
アクチュアリー試験は最短でも2年かかるので、もし優秀な受験生がノーミスで合格したら、理屈上は19歳の正会員が生まれることになります*1
ちなみに、海外の最年少記録はどうなっているか調べてみたところ、SOAでRoy Juさんという方が2015年に20歳で正会員になった、という記事が見つかりました(わざわざ記事にするのがSOAらしいですよね)。
www.soa.org
ちなみに、SOAの受験資格に年齢制限はありません。なんとなれば、小学生のときからでも受験できます。一方で、2次試験に相当する試験が専門的であることと受験料がかなり高い(科目によって1,225ドルかかる)こともあってか、今のところ20歳が最年少記録、となっているようです。年齢制限がなくて、これです。

とまあ理屈のうわべだけの話で自分も最短でアクチュアリー試験を突破したわけでもないのに、資格はあっても偉そうなことを語る資格はないのは重々承知ですが、それでも敢えて書かせてください(←要はただの言い訳を並べただけ)。
まあきっと、いつかは正会員の最年少記録は生まれると思います。大学受験の必要のない内部生あたりが高校生のときから勉強して、順調に合格していく、というのは最年少公認会計士の記事を見ていればたやすく想像できます。
アクチュアリーとしては、仲間が増えることはいいことです。一方で、多くの若手受験生が大学生であることを鑑みると、大学生時代に頑張ってきたこと(世間で言うところのガクチカ)が「アクチュアリー試験」で本当にいいのでしょうか。興味があるなら止めはしませんが、本業を疎かにしてまでやりこむほどのものではない、というのは個人的には思います。私もそうですが、多くの正会員は社会人生活を送りながらアクチュアリー試験を突破してきました。それよりも、目の前にある興味あるもの(それが本当にアクチュアリーであれば止めないが)に打ち込んで、大学だからこそできる研究に打ち込んだ方が長い目で見て良いのではないか、と思います。
あと、理屈上浪人生や高卒、中卒でも受験はできますが、とりあえず大学に入ってから受けましょう。万が一大学を経ずに正会員になれたとしても、アクチュアリー採用をしている多くの会社は大卒を基本的に要件としているのが現実だからです。
もう、とにかく、受験生なら地に足をつけましょう!
そもそも1次試験で求められる数学は学部1年で習う微積の知識は必要だし、確率統計はともかくモデリングも本来なら学部3年で習うようなトピックです。また、会計・経済・投資理論(通称KKT)も、経済こそ学部1,2年で習うトピックではあるものの、会計と投資理論は学部2,3年で習うようなトピックでレベル感が違います。いくら学部1年で受けられるからといって、そう簡単には受からないのがアクチュアリー試験です。早く受かるに越したことはないですが、無理は禁物です。どうか早期合格を煽る人たちに振り回されないようにしてください。

と、いろいろ書いていたら、数年前にこんな記事を書いたことを思い出したんですよ。
key-channel.hatenablog.com
いやー、この記事の発端のアカウントの方、もうちょっと遅く決心していたら良かったのに。。と思う一方です(久々にアカウントを覗いたらリツイート数件のみで自分からのツイートは全部消えていました…)。

本題に戻ります。もう1つの大きな変更は受験料の変更です。
これまで、受験料は非会員は1科目10,000円、会員は7,000円だったのですが、今年度の試験からは一律8,500円になります。すなわち、非会員からすると値下げですが、会員からすると値上げです。受験生の大半は会員であることを考えると、ほとんどの人にとっては値上げですね。
リリースにはいろいろ理由が書いてありますが、まあSOAの2次試験の1科目1,225ドルに比べれば、、まだ良心的とも思えませんか?

あと、1次試験の日程が、昨年は5日間だったのに対し、今年は4日間に変更されていることにも注意です。3日目の午前の年金数理と午後の数学を両方受ける受験生は、受験会場の選択に注意が必要です。

大学1,2年生、いや、18,19歳の方にとってはいきなりチャンスが降ってきた今回の試験制度の変更ですが、受験するとしてもダメでもともとの気持ちくらいがちょうどいいと思います。
ともかく、受験される方は頑張ってください。

*1:例年理事会承認は3月上旬なので、それ以降から4月1日までに誕生日の人は19歳の正会員ということになる