菅野問題にみるドラフト制度への提案

今年もいろいろとプロ野球の出来事がありました。西武ファンとしては、滑りこみ3位になってクライマックスシリーズのファイナルラウンドに進出したことは、最後の最後に「勝利への執念」を見せてくれた、と喜ばしいことでした。それだけに、ソフトバンクを破れなかったのは残念でならないですが。。
さて、そんな中で球界で騒動が続いているのは、日本ハムへドラフト1位指名された東海大学菅野智之投手の入団拒否でしょう。当初、マスメディアでは巨人の一本釣りではないか、と推測された中で、日本ハムは半ば強行にも見える形で指名しにいきました。とはいえ、伯父に原監督を持つ菅野投手としては、なんとも不本意だったのでしょう。

日ハムの行動は正しい

とはいうものの、日本ハムの行動は決して間違ってはいません。ドラフト会議では、プロ志望届を出した選手ならば、誰でも指名はできるのです。慣例的に、指名予定の選手へ挨拶回りをする、というものはあるにしても、あくまでも原則に忠実になって指名したまでです。「強行」というのは、それこそ勝手に「○○球団が△△を指名するかも」と推測報道から取った偏った見方でしょう。ドラフト会議で1位指名を告げた瞬間、会場から拍手が起こったのは、当然といえば当然でしょう。

野投手は戦略ミスをした

敢えて、菅野投手に同情するならば、菅野投手は戦略に失敗したのか、と思います。ゲーム理論での戦略の1つに「コミットメント」というものがあります。

コミットメント・・・先に自分が行動を起こすことで、自分に有利になるようにする戦略的行動。(入門経済学第3版・伊藤元重著)

過去2年のドラフトを見ると、巨人に単独指名された長野選手と沢村投手を見ると、ドラフト前にきちんと「巨人以外の指名は拒否する」と表明しています。特に長野選手は2度の指名拒否がその表明の堅さを表しています。コミットメントが単独指名と功を奏しているのです。
が、今回の菅野投手はどうでしょう。メディアが「伯父に原監督を持つからやはり巨人では・・・」と空気を作るかのような報道のされ方だったと記憶しています。本人からの表明はありませんでした。コミットメントがあればまだ他球団が躊躇する余地はありますが、本人からの意思がない以上、交渉次第では説得できる、と考えることはできるでしょう。

ドラフト会議のショーパフォーマンスを諦めよ

この際、ドラフト制度自体を改める、ということも検討してもいいのではないでしょうか。メディアを追い回された結果、アンマッチな結果になるのは球団、選手にとってもよろしいことではありません。
もちろん、完璧なドラフト制度なんてありません。それを前提にさせていただくと、現行制度に加えて「ドラフト1位で複数球団に指名された場合、予め登録した優先順位リストを基にした上位球団に交渉権が与えられる」とするのがベターではないでしょうか。
現行の制度だと、選手側はコミットメント戦略と指名拒否以外に球団を選ぶ余地はありません。球団の均等な戦力割り振りに重点を置いた結果が、今回のアンマッチだったのではないでしょうか。とはいえ、以前存在した逆指名制度を復活させるのは、栄養費問題をはじめとするモラルハザードが出てくるでしょう。
そこに、1位指名された選手に対しては、希望球団に順位付けすることで、自分がより行きたい球団を選べる制度にするのです。就活生だって、複数社内定もらったらこちらから選べるのに、プロ野球だけ選べない、というのはさすがに不平等ではないでしょうか。
テレビ中継が復活して、ドラフト1位のくじは良くも悪くもいくつものドラマを生みました。しかし、今こそメスを入れるときです。球団も選手も納得するドラフト本来の制度に戻っていくのを期待したいです。