2022年アクチュアリー試験CBT化へ~すぐに起こること、中長期的に起こりそうなこと~

※私は執筆時点でア会の資格試験関連に一切携わっていません。一会員の個人的な意見・感想として読み流してください。

日付変わって昨日にビッグニュースが飛び込んできました。例年通り、今年のアクチュアリー試験の試験要領が公表されたのですが、それとともに資格試験そのものが2022年からCBT(Computer Based Testing)へ移行することが公表されました。

www.actuaries.jp

要点をまとめると、

  • 紙ベースの試験は今年が最後
  • 来年から、受験生はいわゆるテストセンターでコンピュータ上で受験
  • 試験会場は現行の東京・大阪以外にも設置予定
  • 開催時期、実施回数、受験料、試験科目、試験範囲は当面そのまま

ということのようです。

CBTは、SOA(米国アクチュアリー会)の試験やTOEFL(正確にはiBT)、証券アナリスト基礎講座修了試験などで導入されているコンピュータベースで受験する試験形式のことです。最近ですと、生命保険協会が実施する一般課程や生命保険講座などの試験も2020年からCBTになりました。

CBT試験概要 | 生命保険協会

SOAやIFoAでもすでにCBTで実施しているし、さらにCERA試験は去年からオンライン試験に移行し、いつwebベースの試験に移行するのか待っていたところなのですが、ようやく重い扉が開いたということで、この流れは歓迎したいと思います。

特に、試験会場が東京・大阪以外にも拡大とのことなので、関東圏や関西圏以外に在住の受験生には助かる措置ですね。

私自身、テストセンターでの受験といえば、院試のために受けたTOEFLと新卒採用のためのSPI受験での経験くらいしかないのですが、その乏しい経験と妄想で、これから起こりうることを想像してみました。ただの想像なので、来年以降フタを開けてみて「全然違うじゃないか!」と文句言われても責任は取れないので、悪しからず。

すぐに起こること

「速記力」を鍛える必要がなくなる

アクチュアリー業務に携わっていなくても容易に想像できるかと思いますが、実務で手書きでバーッと書くような仕事なんてありません。強いて手書きをすると言えば決算や報告書にサインする程度でしょうか。しかしながら、現行のアクチュアリー試験の2次試験では早く・綺麗に書く能力が黙示的に問われています。目安として、所見問題の解答用紙1枚(約1050字)を20分で書き切らなければなりません。私に限らず、所見対策のために「ペンダコ」ができたという正会員は少なからず聞きます。

しかしながら、CBTになれば、タイピングさえスムーズにできれば、手書きよりも早く記述することができます。字を書くのが遅い人や字が汚い人には朗報ではないでしょうか。

所見問題は枚数制限から字数制限に?

先ほどの関連で、裏を返すと、いかようにも書けちゃうことになります。現行の所見問題では枚数制限がありますが、CBTに移行することで「枚数」という概念から「字数」という概念に変わるのではないでしょうか。コンピュータベースだといくらでも書けちゃうので、とりとめのないことを漫然と書きがちです。論展開の骨子を紙ベースの試験以上に意識しておく必要があるでしょう。

試験問題のパターンは複数?

TOEFLの試験からイメージするに、出題される試験問題は、受験生によって異なるかもしれません。というのも、テストセンターで受験するという性質上、受験生が一斉に受験する、というのは難しいと思います(二次試験なら可能でしょうが…)。そうすると、その時差を利用してカンニングする受験生が出てくるのを防ぐためには、出題パターンが受験生ごとに違うこともありうるかもしれません。

ちなみに、テストセンターの会場を調べてみると、東京は結構会場数がありそうです。例えば証券アナリスト基礎講座修了試験の会場を見ると、約40会場は使える余地がありそうです。一番受験生が多い数学で約1000人なので、極論全員東京に集まって1会場25人と見積もっても、もしかしたら同時に実施できるかもしれません。おや、そういえばテストセンターリストの中に五反田TOCがありますね。

j5.prometric-jp.com

1次試験の合否はすぐ分かる?

受験生のよくあるクレームの1つとして、「1次試験はマーク式ですぐ結果がわかるはずなのに、合否通知は2次試験と同じ2月中旬」というのがあります。この気持ち、よくわかる。

紙ベースの試験だと、一旦マークシートなり解答用紙を回収するという行為を行うので、合否通知も回収側に委ねられるということになるのですが、CBTですと、1次試験ならすぐ合否通知を出せるのではないでしょうか。実際、SOAの試験でもすぐに合否がわかるようになっています。

あくまでも私見ですが、こういうところで変な「公平性」を出して合否通知はこれまで通り一律2月、とならないことを祈ります。

中長期的に起こりそうなこと

データ分析に関する試験の追加?

リリースでは、「試験科目及び試験範囲についての大幅な見直し(※4)については、現時点では予定していません」とあります。しかしながら、これはあくまでも「現時点」であり、中長期的には試験科目が増える可能性があることは否定していません。

CBTにより可能になることは、PCの操作を用いた試験が可能になるということです。SOAの試験では、PA(Predictive Analytics)という試験科目があります。これは、5時間15分(!)の試験時間で、データ分析とレポートの提出が求められます。

アクチュアリーの業務というのは、紙とペンを持って積分するよりも、データをこねくり回していろいろと分析・報告する(プライシングであれバリュエーションであれ、リスク管理であれ)のが大部分であり、求められるスキルを再定義されても然りではないでしょうか。これと同類な試験が、今後追加されるかもしれません、知らんけど。

www.soa.org

年1回から試験回数が増える?

試験回数は現時点で年1回です。そして、リリースでも現時点で変更の予定はないとしています。しかしながら、SOAの試験では、多い科目では年6回実施しています。CBTだと大掛かりな会場準備をする必要がないので、手軽に試験を実施できるようになります。あとは試験委員側のキャパシティ・クオリティの問題さえクリアできれば、理屈としては可能だと思いますし、それがアクチュアリー会の裾野を広げることになるのではと思います。もっとも、正会員からの受験機会の数という意味での不公平感のクレームが出ないとは言い切れませんが…。

 

受験生としては、紙だろうがCBTだろうが、現時点で残っている試験科目に対して最速で合格できるように日々勉強に取り組むことが賢明だと思います。今年の試験まで半年切りましたしね。