ホテリングの立地モデル〜H25年度アクチュアリー試験問題から〜

今年のアクチュアリー試験から1週間近く経過しておりますが、受験生の皆様、お疲れ様でした。
さて、試験が終わってからいろいろと振り返ったり解き直したりされる方がいらっしゃいます。その行為自体は否定しないのですが、私の場合間違いを見つけて落ち込んで発表まで精神衛生が悪くなるのが常なので、私は一切するつもりはありません。むしろ、発表まで遊んだり飲んだり、と違うことをする方がよろしいのではないかな、と思います*1
一方で、受かってしまった科目は特に関係ないのでざっと問題を見ています。その中でも、会計・経済・投資理論(通称KKT)の問題はちょっと驚きました。会計は平年通りの問題だと思いますが、経済、投資理論は新しいタイプの問題ばかりで戸惑った方が多いのではないでしょうか。
特に驚いたのは、経済の問題7(8)でホテリングの立地モデルの問題が出題されたことです。選択肢を見ると、この状況だとXとYの利得は同じで、破線の交点を中心に点対称に並べられていて、問題文の書きぶりから、複数答えがあるのかな〜とか思ってしまいます。が、結論から言うと、この答えは(G)の1つだけです。
いきなり2次元ではちょっと難しいので、1次元上で考えてみましょう。

AとBという店(プレイヤー)を考えます。この問題のとおり客は線上に一様にいると仮定し、客は今いる場所から近い店に集まるとします。この状況では、とりあえずAとBは端にいるものとします。このときのAとBの客の取り分はこのようになります。

線上の中点から左の客(図でいうところの赤い部分)はAが、右(青い部分)はBが取る、というようになります。ここで、仮にBが動かないでAがちょっと右に店を動かしたとしてみましょう。

そうすると、Aのいる店の左側の客は当然Aの客になります。一方、AとBの間は、AとBの中間から左はA、右はBとなります。ここで、この中間は線上の中点より右にずれることになります。結果として、Aの利得が増えることになるので、両端にいる状況では真ん中へ近づくインセンティブを持つことになります。もちろん、これはBにも同様のことが言えます。そうすると、お互い真ん中へ近づいていって、最終的にはお互いに真ん中へくっつく形に立地することがナッシュ均衡、となります。2次元においても同様のことが言えるので、答えは(G)の1つだけ、となります。
理論的にはこれをN次元に拡張してみたり、プレイヤーをN人にすると…、というのはそれはそれで興味深いのですが、あまり経済学を深く勉強していない受験生に初見で出題するものですかねえ…、と思ってしまいました。まあ(経済学部生にとっては)有名な結果*2なので、知っていれば瞬殺できますが。いやはや、これは教科書+過去問ばかりのパターン演習だけではなく、定義をしっかり理解したうえでさらに意欲的に学習せよ、ということを伝えているのでしょうか…。
ホテリングの立地モデルについては、梶井・松井先生の「ミクロ経済学 戦略的アプローチ」でもっとわかりやすく解説してあります。

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*1:あくまでも、私の場合です。

*2:ゲーム理論ないし産業組織論で勉強する。