なぜアクチュアリー試験1次試験の推定合格率に×1.3をするのか

昨年行われたアクチュアリー試験の結果が今週の火曜日(16日)に出ました。私は一歩前進、というところでしたが、全て取りきりたい!と思って臨んでいたので、ちょっと悔しい面もあります。
ところで、試験結果が出ると、推定合格率を出すことをよくやります。昨年度の試験はこういう結果になりました。


この合格率の推定は、以下のように計算しています。

1次試験科目=合格者数/合格最終受験番号×1.3
2次試験科目=合格者数/合格最終受験番号

なぜ1次試験科目だけ×1.3するのか、気になりますね。
これは、出席率の違いに起因します。受験番号は申し込んだ方全員に、50音順・会場別に振られます(たぶん、ただしH23以前は会社・会場別で個人会員が最後)。アクチュアリー会が最終的に公表する合格率の分母は「受験者数」です。この合格最終受験番号と受験者数の関係が「×1.3」の有無となります。
過去5年のアクチュアリージャーナルに載っている申込者数と受験者数から出席率を算出すると、1次試験科目は概ね75%前後、2次試験科目は概ね90%前後でした。もう分かりましたね、「×1.3」は掛けて補正するというより、合格最終受験番号≒申込者数と仮定して、分母を1.3で割っている(逆数を取ると×約77%)のです。
ではなぜ1次試験と2次試験でこんなに出席率が違うのか?ということになりますが、私は申し込んで欠席するということをやったことがないので、あくまでも想像ですが、

  • とりあえず申し込んだけど、勉強が間に合わなくて諦めた
  • 会社で名目的に受けさせられているから(受かる気はさらっさらなくて、試験開始1時間後にすぐ退出する2016/2/22追記:試験場には来ない

というのが2次試験との出席率の差ではないでしょうか。
アクチュアリージャーナルと、手元で入手できた科目別合格者受験番号一覧(H23〜H26)を基に、1次試験の推定合格率と実際の合格率の散布図を取るとこうなります。

結構近似されていることがわかるかと思います。
その一方、2次試験の推定合格率と実際の合格率の散布図を取ると…

補正していないので、1次試験よりは相関が劣りますが、実際10%前後という意味では大体信頼出来そうです。
ところで、2次試験の出席率が90%なら、「×1.1」すればいいんじゃね?という意見もありそうなので、念のためやってみました。

若干相関が増しましたが、微々たるものですね。。

2次試験はともかく、1次試験はマークシートなんだから、とりあえず塗りつぶせば合格するかもしれないんだし、受けないという選択肢は全くもって不合理だと思うのですがね。ともかく、今年の試験に向けて、今から勉強をスタートすれば合格できるはずです。
これを読んで今から勉強を始めようと思った方は、是非2/27(土)のアクチュアリー受験研究会のキックオフミーティングに参加してみてください!詳細はこちら→http://pre-actuaries.com/

2015年大予測!の答え合わせ

毎年この時期になると、経済誌などを中心に、「○○○○年の大予測!」と見出しを打った雑誌を書店で見かけますね。
ところで、予測するのはいいのですが、この予測って当たるんかいな、予測して反省とかしとるんかいな?と思ったことはないでしょうか。予想して盛り上がるのは構わないのですが、その予想の当たり外れを次に活かしてさらに予測率を高めようと努めるのはPDCAサイクルの流れとしては当然のことではないのでしょうか。
身内ではもしかすると何かしら思い返しているのかもしれませんが、今年を振り返るという意味で総括する特集を組んでもいいのではないでしょうか。とはいえ、今日現在でそういう特集を組んでいそうにないので、勝手に答え合わせをすることにしてみました。
対象にしたのは、次の雑誌です。

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作者: 週刊東洋経済編集部
出版社/メーカー: 東洋経済新報社
発売日: 2014/12/22
メディア: Kindle

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出版社/メーカー: ダイヤモンド社
発売日: 2014/12/22
メディア: 雑誌

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さすがに全部は無理なので、一部ピックアップしてみます。

1. 日経平均株価
まずは東洋経済から。

安値:最低は15,000円、最高は17,316円、最頻値は16,000円(9人)
高値:最低は18,000円、最高は22,000円、最頻値は19,000円(7人)
回答数は21人

次にダイヤモンド。

2015年末の予想
最低は18,525円、最高は23,000円、最頻値は19,000円(3人)、平均は20,190円
回答数は8人

両誌とも切り口がビミョーに違うため、単純比較できないですが、結果はこうなりました(注:2015年12月19日時点のものです)。

2015年最安値:16,592円57銭(2015年1月16日)
2015年最高値:20,952円71銭(2015年6月24日)
2015年12月18日現在:18,986円80銭

まだ1年が終わっていないので暫定版ですが、今後よほどの大暴落(or大好況)がなければこのままになるかな、と思います(個人的見解、念のため)。安値は大体当たっている一方で、高値は回答の範囲内とはいえ、想定以上に伸びた、といえるのではないでしょうか。年末だと、まだ暫定とはいえ最低値に届いてしまいそうですね。。

2.為替
ユーロも載っていますが、ここでは米ドルのみ取り上げます。まずは東洋経済

年初来高値:最低は120円弱(注:数値表記ではなく、チャート表記のため正確な値は不明。他の一部も同様)、最高は132円、最頻値は120円を少し超えたあたり(約9人)
年初来安値:最低は105円、最高は120円弱、最頻値は115円付近(約7人)
回答数は24人

次に、ダイヤモンド。

2015年ドル年末値
最低は123円、最高は130円、最頻値は125円(3人)
回答数は8人

これまた2015年12月19日時点のものですが、結果はこうなりました。

年初来高値:125円84銭(2015年6月5日)
年初来安値:115円84銭(2015年1月16日)
2015年12月19日終値は121円22銭

ここ数年の円安が続いて、やはり予想も円安傾向となりました。6月に125円台まだ上がったときは、どこまで続くのかと思いましたが、黒田日銀総裁のいわゆる「黒田ライン」の発言ですっかり消えてしまった、というのが印象です。

ちなみに、FRBの利上げについてもすでに両誌とも取り上げており、

東洋経済:年央に引上げという読みがある意見がある一方、懐疑論も出ているという意見も記事中に取り上げる。
ダイヤモンド:利上げ時期予想アンケートを実施。10人中6月が5人、7月に1人、9月に2人、12月に1人

という感じでしたが、正解は12月17日(現地時間)でしたね。年末説も拭えないけど、当時の有力説は年央、ということだったのでしょうか。

3.ラグビー
3,4とスポーツの話題ですが、ダイヤモンドではラグビーについて取り上げており、エディー・ジョーンズ氏のインタビューを行っていました(!)。これは週刊ダイヤモンドの先見の明ということなのでしょうか。
今年のW杯について、エディー氏は以下のように言及しています。

――19年のW杯に向けて、ラグビー人気は高まるでしょうか。
眠っている人気はあります。まず代表が成功することが人気につながります。例えば、15年のW杯でベスト8にいければ、その後4年間、人々の関心は高まります。
(中略)
――15年のW杯の見どころは。
日本が優勝するのは難しいけれど、大会の目玉となるチームにはなれます。とんでもなく素晴らしいラグビーをして、皆が話題にするようなチームにしたいですね。

結果としては残念ながら予選リーグ敗退でしたが、言うまでもなく記録よりも記憶に残る戦いぶりでした。文字通り、「大会の目玉」になり、「皆が話題にする」競技に昇華したのではないでしょうか。正直、私も日本代表には勝ってほしいけれども、厳しいのではないか、という見方だったので、なおさら驚きでした。

4.プロ野球
こちらもダイヤモンドのみ取り上げていました。「注目はパの『怪物』対決!」と銘打って、ソフトバンクの松坂投手と日本ハムの大谷投手を取り上げていました。が、結果は大谷投手の不戦勝というところでしょうか。。

5.生命保険
最後に、生命保険業界についての予測を取り上げてみます。これは東洋経済のみ取り上げていました。

必ず起こる:生保各社の海外事業の拡大、買収→大手をはじめとして海外生保会社を買収
起こりそう:保険代理店の再編・買収→日本生命乗合代理店買収を発表
起こるかも:外資系生保で事業売却→SBIがPCA生命を買収、5月にSBI生命へ商号変更

この他で大きな出来事といえば、日本生命が三井生命の子会社化を発表したことでしょうか。まあとにかく「買収」という言葉が飛び交った1年だった、という印象でしたね。「ザ・セイホ」という言葉を思い浮かべました(使い方は若干違うけど)。

というわけでいかがだったでしょうか。大ハズレの予測はあまりなかったような気がします。まあハズレても遠からず、というところでしょう。今年も大予測本が出ているので、是非とも来年の今ごろにとっておいて、比較しながら読んでみるのもいいかもしれません。

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出版社/メーカー: 東洋経済新報社
発売日: 2015/12/21
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出版社/メーカー: ダイヤモンド社
発売日: 2015/12/21
メディア: 雑誌

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いろいろなアクチュアリー

※この記事はあくまでもネタです。
朝からTwitterを見ると、こんなツイートを見かけました。

シャチクアリー…WLBを推奨する現代とは逆行する(といってもそういう実態の人もいる)言葉ですね。。
というわけで、アクチュアリーにもいろいろな人がいるので、どんな人がいるのか考えてみました。

アクチュアリーの皆様はどれに当てはまるでしょうか?

生命保険業の健全経営戦略

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作者: 大塚忠義
出版社/メーカー: 日本評論社
発売日: 2014/07/25
メディア: 単行本

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昨年のアクチュアリー試験前から読みたいと思っていたこの本を、ようやく読了しました。
この本の趣旨は、保険会社経営にとって「健全性指標」が重要であることとその指標を計量化するための客観的手法について提言されているものです。
保険会社の健全性指標で代表的なものといえば、ソルベンシーマージン比率があり、これが200%未満だと早期是正措置がとられることになっています。これを導入したのは1995年(翌96年施行)で、2000年ごろに生保会社の破綻が相次ぎましたが、このときソルベンシーマージン比率は200%はおろか500%を超えていながらも破綻した会社もありました。すなわち、ソルベンシーマージン比率だけをもって健全性を判断するには限界があるのです。
この本では、健全性指標として「デフォルト距離」なるものを導入することで、ソルベンシーマージン比率よりも敏感に財務インパクトの影響を測れることを主張しています。その事例として、前述した2000年ごろに破綻した会社とそうでない会社はどこで分けられたか、という分析がされています。そこで興味深いのは1996年度に自己資本を積み増した会社は生き残ったものの、97年以降に積み増した会社は破綻に至った、と論じているのです。意思決定の早さとレピュテーションは大事である、と身に染みる分析です。
2000年ごろの生保会社の破綻について論じられているものとして有名なものには、植村信保氏の「経営なき破綻 平成生保危機の真実」があります。こちらはオーラルヒストリーを用いてなぜ破綻したのか、を論じています。ただ、今回の本は経営指標から破綻に陥った所以を論じているところに一線を画するところがあります。

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作者: 植村信保
出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
発売日: 2008/09
メディア: 単行本
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1つ気になるとすれば、「デフォルト距離」は確かにふさわしい指標かもしれない、と読んでいて思う一方で、破綻してから後付けで数値をこねくり回して(←上から目線)、今後の経済環境や生保経営の変動でも説明しきれるか、というところは残ります。とはいえ完全な指標というのはソルベンシーマージン比率同様、ないのかもしれません。継続的に「デフォルト距離」を測定して、モニタリングをしていくことが必要でしょう。
すべての保険会社がオープンに有用な財務指標を公開しているとは限らない、というのも歯がゆい気がしました。それが分析の限界を示す要因の1つとなっているのでしょう。とはいえ会社も簡単に財務情報を公開するわけにはいかないところもあるのでしょう。となると、この分野周辺の研究の展開となると、産学協同で社外に公開しない内部管理会計の指標を用いてさらなる分析ができるのかもしれません。

アクチュアリー試験受験生にとっては、直接2次試験に役立つような内容ではありませんが、なぜ解約率を織り込むことで保険料が安くなるのかを数値例を用いて解説している箇所はイメージしやすく、参考になることでしょう。

アクチュアリーが出てくる映画〜6才のボクが、大人になるまで。〜

試験も終わったということで、久々に映画を観に行ってきました。

今回観たのは、「6才のボクが、大人になるまで。」。12年間も時間を掛けて撮影された作品なんだそうです。

※以下、(本筋ではないですが)若干のネタバレが含まれます。

主役の少年が成長していく過程やその葛藤がメインの見物であるのですが、それは多くの映画評論で語られているので、そちらに譲ることにして、なぜ普段映画に行かない私が観に行こうと思ったか。それは、アクチュアリーが登場するから。
主人公・メイソンの「最初の」父親は、ミュージシャンを夢見ていたのですが、それを諦めて一念発起し、保険会社へ就職しアクチュアリー(字幕では保険数理人)になった、と子供たちに語るシーンがあります。しかも、アクチュアリーの試験に2年で受かった(!)らしいので、この父親頭良すぎじゃないの、思わずにはいられませんでした(日本だと合格まで平均8年かかるのに)。

アクチュアリーが登場する映画というと、「アバウトシュミレット」という作品があり、そこで描かれていたアクチュアリーは、髪はボサボサで社会になじめない象徴のようなものでした。これにはアメリカのアクチュアリー会も抗議したそうで、「本作品におけるアクチュアリーの描写、すなわち、数学オタクであり、社会性を欠き、さらには髪がボサボサというイメージは、97.28892%の確率で誤りである」という声明を発表しました。*1

ではこの作品ではどう描かれているかというと、、私が見る限り、明るい性格でいかにもアメリカナイズな父親。アクチュアリー会の抗議が実った、というよりも「アクチュアリー」は安定を得るための職業、という象徴のように描かれていたという気がします。

是非皆さんにも観に行っていただきたいと思う作品ですが、多くの劇場では12月までの上映のようなので、お早めに。

それにしても、12年間もかけて制作する作品なんて、日本ではできないだろうな、と思って劇場を後にしたのですが、外に出た途端、「子供がまだ食ってる途中でしょうが!」という名ゼリフを残したドラマのことを思い出しました。

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平成25年度アクチュアリー試験の推定合格率

昨日は、昨年年末に実施されたアクチュアリー試験の合格発表日でした。合格された皆様、おめでとうございます。合格者一覧はこちらから見ることができます。
さて、今回の試験の合格率はどれくらいになるか、計算してみました。1次試験は「合格者数/合格者中最後の受験者の受験番号×1.3*1」、2次試験は「合格者数/合格者中最後の受験者の受験番号」で計算してみたところ、以下のようになりました。

  • 数学・・・142/1186×1.3≒15.6%
  • 生保数理・・・147/846×1.3≒22.6%
  • 損保数理・・・190/886×1.3≒27.9%
  • 年金数理・・・350/824×1.3≒55.2%
  • KKT・・・129/922×1.3≒18.2%
  • 生保1・・・83/352≒23.6%
  • 生保2・・・43/332≒13.0%
  • 損保1・・・14/152≒9.2%
  • 損保2・・・16/140≒11.4%
  • 年金1・・・16/167≒9.6%
  • 年金2・・・14/154≒9.1%

まずざっと見て、年金数理の合格率が2年連続高いことに驚かされます。2年連続大問を廃止し、小問も過去問で出題実績がある問題が散見されたことが要因でしょうか。とはいえ、ひとたび大問を復活すると以前のような低合格率になりかねないので、いわゆる「調度良い問題」が出しづらいのかもしれません。
また、損保数理も1次試験5科目の中では2番目に高いですが、30%弱にとどまりました。私が解いたときは、昨年(平成24年度)と難易度としては大して変わらないな、という印象を持ったのですが、新しいタイプの問題の出題が影響をしたものと考えられます。
数学・生保数理は以前の合格率に逆戻り、KKT(会計・経済・投資理論)は1次試験のなかで比較的合格率が高い科目なのですが、経済、投資理論の新傾向の問題でここまで落ち込んでしまいました。ネット上ではニューヨークチーズケーキの恨みが聞こえてきます(苦笑)。
2次試験に目を移すと、生保1のフィーバーぶりが伺えます。所見問題が比較的書きやすい題材だった、という感想を聞く限り、やはり取り組みやすかったのではないでしょうか。それ以外は例年並み、といったところでしょうか。例年並みで10%前後ですので…相当覚悟を決めないといけないと思います。
一方、これは伝聞情報ですが、1次試験5科目同時合格者が少なくとも2人いるようです(→2014.7.4追記:4人のようです)。一昨年は1人、昨年は3人なので、今年は何人になるのでしょうか。どのくらいの方が5科目受験されているかはわかりませんが、知り合いで5科目合格された、ということを聞くと、かつて5科目合格にチャレンジした私としてとても嬉しいものです。学生におかれましては、学生正会員、ひいては学生CERAも夢ではありません(笑)。

なお、合格率の算出方法は以下の記事を参考にしました。

2次試験全科目合格された方、お疲れ様でした。合格された方も、不合格だった方も、今年も頑張りましょう!

P.S. 1次試験、突破しました。

*1:例年の推定から、1.3倍かけたものが大体近似するそうです。

ホテリングの立地モデル〜H25年度アクチュアリー試験問題から〜

今年のアクチュアリー試験から1週間近く経過しておりますが、受験生の皆様、お疲れ様でした。
さて、試験が終わってからいろいろと振り返ったり解き直したりされる方がいらっしゃいます。その行為自体は否定しないのですが、私の場合間違いを見つけて落ち込んで発表まで精神衛生が悪くなるのが常なので、私は一切するつもりはありません。むしろ、発表まで遊んだり飲んだり、と違うことをする方がよろしいのではないかな、と思います*1
一方で、受かってしまった科目は特に関係ないのでざっと問題を見ています。その中でも、会計・経済・投資理論(通称KKT)の問題はちょっと驚きました。会計は平年通りの問題だと思いますが、経済、投資理論は新しいタイプの問題ばかりで戸惑った方が多いのではないでしょうか。
特に驚いたのは、経済の問題7(8)でホテリングの立地モデルの問題が出題されたことです。選択肢を見ると、この状況だとXとYの利得は同じで、破線の交点を中心に点対称に並べられていて、問題文の書きぶりから、複数答えがあるのかな〜とか思ってしまいます。が、結論から言うと、この答えは(G)の1つだけです。
いきなり2次元ではちょっと難しいので、1次元上で考えてみましょう。

AとBという店(プレイヤー)を考えます。この問題のとおり客は線上に一様にいると仮定し、客は今いる場所から近い店に集まるとします。この状況では、とりあえずAとBは端にいるものとします。このときのAとBの客の取り分はこのようになります。

線上の中点から左の客(図でいうところの赤い部分)はAが、右(青い部分)はBが取る、というようになります。ここで、仮にBが動かないでAがちょっと右に店を動かしたとしてみましょう。

そうすると、Aのいる店の左側の客は当然Aの客になります。一方、AとBの間は、AとBの中間から左はA、右はBとなります。ここで、この中間は線上の中点より右にずれることになります。結果として、Aの利得が増えることになるので、両端にいる状況では真ん中へ近づくインセンティブを持つことになります。もちろん、これはBにも同様のことが言えます。そうすると、お互い真ん中へ近づいていって、最終的にはお互いに真ん中へくっつく形に立地することがナッシュ均衡、となります。2次元においても同様のことが言えるので、答えは(G)の1つだけ、となります。
理論的にはこれをN次元に拡張してみたり、プレイヤーをN人にすると…、というのはそれはそれで興味深いのですが、あまり経済学を深く勉強していない受験生に初見で出題するものですかねえ…、と思ってしまいました。まあ(経済学部生にとっては)有名な結果*2なので、知っていれば瞬殺できますが。いやはや、これは教科書+過去問ばかりのパターン演習だけではなく、定義をしっかり理解したうえでさらに意欲的に学習せよ、ということを伝えているのでしょうか…。
ホテリングの立地モデルについては、梶井・松井先生の「ミクロ経済学 戦略的アプローチ」でもっとわかりやすく解説してあります。

http://www.amazon.co.jp/gp/product/4535552029/ref=as_li_qf_sp_asin_il_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4535552029&linkCode=as2&tag=keykeioboy-22ミクロ経済学 戦略的アプローチ
作者: 梶井厚志,松井彰彦
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*1:あくまでも、私の場合です。

*2:ゲーム理論ないし産業組織論で勉強する。