アクチュアリーが出てくるマンガその1〜ホムンクルス〜

アクチュアリー試験を受験された方、お疲れ様でした。
いろいろなご感想をお持ちだと思いますが、今年はゆっくりお過ごしください。

さて、今回は日々テキストや過去問ばかり眺めて疲れているであろうアクチュアリー受験生向けに、アクチュアリーが出ているマンガをご紹介いたします。
アクチュアリーという仕事自体をメインにしたフィクション作品というのはなかなかないのですが、アクチュアリーの人が登場する作品は洋画を中心にちょくちょくあるようです。
その中で、今回は「ホムンクルス」という日本のマンガにスポットを当ててみたいと思います。

http://www.amazon.co.jp/gp/product/4091870767/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&tag=keykeioboy-22ホムンクルス 6 (BIG SPIRITS COMICS)
作者: 山本英夫
出版社/メーカー: 小学館
発売日: 2005/08/30
メディア: コミック
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※以降、ネタバレを含みます。また、手元に作品がないまま記事を書いているため、正確な表現とは若干異なるところもあることをご了承ください。
【作品全体のあらすじ】
ふとしたことで公園近くに車上でホームレス生活をしている名越進。ある日、お坊ちゃん医大生・伊藤学に出会い、報酬と引換えに頭蓋骨の穴を開けるトレパネーションの手術を受けることになった*1。手術後、名越が右目を瞑って左目で人を見ると、実体とは違う形に見えるようになっていた。そこには、人間の深層心理や闇が表れているようだ。名越はそのような人々と交流しながら、自分探しをしていく。

作品自体は人の心底の闇を深くエグったホラーにも近いところがあるのですが、婉曲的にも人の見えない部分を掴んでいるところはカイジにもつながるところがあり、私自身もどんどんと読み進めていきました。

さて、アクチュアリーの話が出てくるのは上のリンクにも付いている6巻。名越が公園でホームレス生活をしている仲間と食事をしているところから始まります。ふと、あるホームレスが名越に話しかけます。「ホームレスになる前は何をやっていたんだ?」名越はこう答えます。「生命保険会社でアクチュアリーをやっていたんだ」と。「アクチュアリー」と言われても何のことかわからないホームレス達。「保険料を計算したりするのがアクチュアリーの仕事。ざっくり言うなら、、人の命に値段を付ける仕事だ」。そう言い切ってざわつくホームレス達。昼休みでベンチで休んでいるサラリーマンを指さして「あの人ならざっと6,000万円」母と赤ん坊を指させば「4,000万円」と言い切る。さらにはホームレスに喫煙歴や罹患歴を聞き出して算式を書き出し、ホームレスに値段を付けようとして、突き飛ばされる…。

ざっとダイジェストを書き出しましたが、ここまで読んで違和感を感じた人は、正しい認識です。
そう、アクチュアリーは特定の人の命に値段を出す仕事なんかしません!
これに近いことをやっている業務を敢えて挙げるとすれば、それはアクチュアリーではなくライフプランナーや契約部の仕事ではないでしょうか。契約者に見合った保険金・保障・保険料をシミュレーションを用いて提案することはあるので、全くないわけではないですが、アクチュアリーが特殊な思考回路をちょっと使っているということと混同してそう言い切ってしまうのはものすごい誤解があります。少なくとも私は、「お、あの人の命の価値は○○○○万円だ!」と言い切るスキルは持っておりません。
それに、アクチュアリーという人物設定なら、算式を書き出すシーンにアクチュアリーっぽく生保数理の記号くらい持ち出せばいいのに、出てきている算式はΣを用いた等比数列程度。。準備不足という感が否めません。数学者とか統計学者という設定ならまだ話は通じるかもしれませんが。。

まあ、アクチュアリーとしての話はグチャグチャだと言わざるをえないですが、ストーリー自体は興味をそそるものなので、この年末年始に読んでみるのもいいのではないでしょうか。

*1:トレパネーションは大変危険なので絶対に真似しないでください。