アクチュアリーとデータサイエンスの未来の事を言えば鬼が笑う

先週の土曜日ですが、日本アクチュアリー会の第7回例会(休日シンポジウム)「アクチュアリーとデータサイエンス」のセミナーに行ってきました。

 

最近の週刊誌を読むと、AIが我々の仕事を奪う、というようなセンセーショナルな見出しが躍り出ているをたまに見かけます。で、2年前の週刊ダイヤモンドの記事には奪われる職業ランキングの上位くらいに、「アクチュアリー」が入っているが入っているではないですか。

diamond.jp正直、どういう根拠でランキングを作ったのか不明なので、コメントのしようがないのですが、今回のセミナーを受けて、アクチュアリーとデータサイエンスをうまく組み合わせて活用することで、さらに発展させていくことができる、ということを確信しました。

 

データサイエンティストなる肩書きを持つ方々は、確かにデータ分析は得意なのでしょう。その一方で、いわゆるアクチュアリー業務のような、専門的な分野に参入しようとするには、やはりその分野のことについても深く理解している必要があります。私の感覚では、そこは1つの壁になっている気がします。

その一方で、試験や実務を通して統計についてはプロフェッショナルであるアクチュアリーは、データサイエンスに親和性があるといえます。アクチュアリーがデータサイエンティストを兼ねるというのは、自然な流れともいえます。

 

セミナーで印象的だったのは、「データサイエンスが伝統的手法の補強として活用できるのではないか」という提起があったことです。

実務としてはまだまだ伝統的手法アプローチがメインである会社が多いと思います。そんな中で、データサイエンスによる新たなアプローチを入れることで、これまで伝統的手法では取り逃していたファクターを含めた分析を可能にし、新たな見地が得られるのではないか、という話だったと理解しています。

 

「なるほど、これがアクチュアリーとデータサイエンスの融合か…」と聞いていて感心。ただ、私はその次に「現状がこれではまだイマイチだな…」という感想も素人考えながら持ちました。どういうことか?

データサイエンスの導入により、今まで見つけられなかったアプローチが得られて、それにより新たなビジネスチャンスが手に入るかもしれません。その一方で、役員陣に説明する際には、ロジカルな説明が求められるわけです。特にベイジアンアプローチなデータサイエンスの手法では、そのプロセスを飛び越して、結果がアウトプットとして表示されることになります。結局、新しいアプローチを得るヒントにはなっても、それがふさわしいというバリデーションは伝統的手法に依らざるを得ないのです。

そうするとどうなるか。仮想の保険会社を想定すると、

伝統的手法を用いるアクチュアリーA「課長、これまでどおりの手法で分析してみました。その結果はこちらです。この原因は△△で…」

データサイエンティストB「ああ、A君。データサイエンスの手法でやってみたら、こんな結果が出たで。まあちょっと検証してみてくれる?じゃ、お先」

A「(バリデーションしなきゃだよ。また残業だよ…)」

もちろん保険会社でこんな会話をするわけないのですが、趣旨はわかっていただけたかと思います。要は、伝統的手法を使うアクチュアリーの業務時間がいたずらに増えないか、という懸念です。

 

現状では「伝統的手法withデータサイエンス」のような補完的役割になるのは然るべきかと思いますが、あるべき姿はもう少し先なのかと。すなわち、将来的には、データサイエンス的手法がもう少し発展して、バリデーションの部分も強化されて、アプローチも説明も進化していかないといけないのではないか、と。そうしていくことで、伝統的手法も進化していけると思います。

そのためにも、いろいろと試行錯誤は必須です。まだまだ知らないことだらけですが、来年に向けてやることはたくさんあるようです。