就職試験においてTOEICを採用することの考察〜茂木健一郎氏の批判から考える〜

今朝のTwtterで茂木健一郎(@kenichiromogi)氏が日本のTOEIC信仰について憤慨しているツイートを連続して散見しました。

「TOEICはガラパゴス化した経産利権」「TOEICは、軟式テニス」。その通りなんじゃないでしょうか。これ以上、TOEICについて何かいうことがあるだろうか。はい、お疲れさまでした。TOEIC,終了〜! http://t.co/vSq4xmZt
http://twitter.com/kenichiromogi/status/200730215167705088

TOEICの英文、マジでつまらないから。あんなのやるんだったら、まともな原書1、2冊読んだ方がまし。あんなので満点とったって、教養ある英語しゃべれないから。マジでやめた方がいいよ。TOEIC関係者、文句あるならいつでも受け付けるから、かかってらっしゃい。
http://twitter.com/kenichiromogi/status/200732575566807040

以前から茂木氏はTOEIC廃止を提唱していましたが、今日になって思い立ったように発言したのは、田村耕太郎氏の記事がきっかけだったようです。

TOEICはガラパゴス化した経産利権

茂木氏のツイートや田村氏の記事を読む限り、TOEICの無能さ、そして優遇ぶりが浮かび上がります。果たして、TOEICは茂木氏の言う通り無用になるのでしょうか?今回はそれを就職試験に限定して考えてみたいと思います。ただし、これはあくまでも私の考察ですので、企業で採用されている実情は一切考慮していないのでその点はご了承を(何かありましたらご意見をください)。

ところで、これからいろいろと論じるわけですが、初めに私の見解を申し上げますと、「TOEICは不要」の立場です。
理由は茂木氏も指摘しているとおりで、リーディングとリスニングの試験ができたからといって、英語ができるとは限りませんし、それならばライティングとスピーキングもあるTOEFLで指標を計った方がまだきちんと計れます。

ただ、現実的に就職試験でTOEICから(例えば)TOEFLに移行するか?というと、それは現実的にまだまだではないか、と思います。

TOEICはコスト安

田村氏が指摘している通り、TOEICは受験料が安いです。TOEICは5,565円、対してTOEFLは安く済ませても210USドル(日本円換算で約16,800円)。多くの学生や社会人が受けるのに、値段が3倍近く違うのはかなりの障壁があります。
また、申込み方法も差があります。TOEICはネットやコンビニ端末でも手軽の申し込むことができて、さらに全国各地で試験を受けることができます。一方、TOEFLはネットでも申し込みは可能ですが、初見では厄介(私も2回受験しましたがとても苦労しました)、支払方法はクレジット決済のみ(郵便為替や小切手も可能ですが、あまり使わないでしょう)、またPCを用いた試験なので、試験会場の定員が少ないので自分のスケジュールに必ずしもマッチしないところがネックです。
現状では、受験者にとってはTOEICの方が受けやすい、というのが現実です。

そもそも、TOEIC「だけ」で英語力を計っているとは思えない

採用条件でTOEICのスコアの下限を設定している企業はありますが、「TOEICができたからといって英語ができるとは限らない」というのはちょっと考えれば分かりきっていることなのに、それでもなぜ敢えて設定しているのでしょうか?
そう考えたときに、私は「単なる足切り」目的ではないかと思いました。
TOEICができても英語ができるとは限りません。しかし、英語ができない人はTOEIC『すら』できないのです。
私が企業の人事部長ならば、英語ができる即戦力を必要とするならば、実際に英語ができることを見抜くべき、と考えるでしょう。そのためには、実際に面接などで英語を話させます。ただ、人気企業となると、受験者も多いため、何人も大量に英語面接をするわけにはいきません。
そこで、TOEICなのです。割と手軽に受験できるTOEICのスコアを利用すれば、少なくとも「英語ができない人」をスクリーニングすることはできます。それから、電話面接や英語面接を通じてチェックすれば、企業にとっては割と効率的かつコスト安で採用できるのです。
そう、TOEICスコアは所詮「コストカット」のための手段なのです。

茂木氏が指摘するとおり、TOEIC(大学受験英語も同様)に固執したところで、ホンモノの英語力は上達しません。ただ、英語ができることはTOEICができることを「十分」満たすのであれば、第一関門くらいには利用できるのです。
というわけで、茂木氏の憤慨に反して、現実的にTOEICはしばらく通用することになるでしょう。

まったくの余談ですが、TOEICでは別のテストとしてスピーキングテストとライティングテストも実施しているのですが、茂木氏はこれらを加味して発言しているのでしょうかね?
それと、楽天が新入社員全員に英語公用化のためにTOEIC600点を課した、と聞きます。しかしそこでなぜTOEICなのでしょうか、TOEIC固執しているところでグローバル化を目指しているとは思えません(無論、英会話などもやっているでしょうが、もっと別の目標を課すべきだったのではないかと)。

すべての資格に言えることですが、資格を手に入れたからといってその人が有能であることを証明しているわけではありません。最低限の指標を示したうえで、自分磨きをすることが重要なのだ、と自らにも戒めてこの記事を終えることにします。